イノベーションと差別化に挑み続ける ─ものづくりの魅力─ <1>

※本記事は、ちばぎん総合研究所発行の経営情報誌マネジメントスクエア3・4月号に掲載の「創立30周年記念座談会 シリーズ・未来への展望 ~千葉銀行頭取と若手経営者との対話~」からの転用記事です。

会員企業の若手経営者を招いて(株)千葉銀行・佐久間英利頭取と語り合っていただくシリーズの3回目。今回ご登場する古谷裕彦社長(古谷乳業(株))はB to C で地域密着型の食品メーカー、宮腰亨社長((株)ミヤコシ)はB to Bで全国さらには海外への展開を進める印刷機メーカーを率いる。業種やタイプは異なるが、製品の品質や技術水準が高いことに変わりはなく、千葉県の製造業の実力を感じさせる対話となった。

水野 今回は「ものづくり」をテーマとして、頭取と、製造業を営む2名の若手経営者からさまざまなお話を伺いたいと思います。最初に、皆さまの事業内容についてご紹介ください。まずは県内外に宅配網を持ち、地域に密着した食品メーカーである古谷乳業(株)の古谷社長からお願いします。

古谷 当社は主に県内の酪農家から生乳を集乳し、多古町にある成田工場で加工し、県内・近接県の物流網・宅配網を通じて、直接お客さまやお得意さまに牛乳やヨーグルトなどの乳製品を中心とした商品をお届けする、地域に密着したメーカーです。県内の小・中学校の給食にも牛乳やヨーグルト等を提供しています。そのほか、量販店向けやコンビニ向けの商品も製造しており、これらは関東をはじめ全国に供給しています。創業は1945(昭和20)年で、私は2014(平成26)年に社長に就任しました。

「おいしさとふれあいを通じ健康ライフの明日を創造する」という企業理念のもと、時代とともに変化していく地域や市場に順応していくよう、技術の向上に努めています。

古谷裕彦 古谷乳業株式会社 代表取締役社長(牛乳・乳製品等製造業:取引店 本店営業部)
1970年千葉県生まれ。大学卒業後、祖父が創業した同社に1993年入社。2014年社長就任。新商品開発、大手コンビニのカップ飲料等のOEMのほか、シニア向け商品の充実・サービスの試行など新たな分野に果敢に挑戦する。

水野 次に、印刷機メーカーとして最先端の技術を持つ(株)ミヤコシの宮腰社長にお願いします。

宮腰 当社は多種多様な産業用印刷機を製造しています。お客さまは県内外の印刷会社や他の印刷機メーカーなどで、いわゆるBtoBを主としています。印刷方式にはオフセット、グラビア、インクジェットなどいろいろありますが、当社が得意とするのはオフセットとインクジェットです。当社は1946(昭和21)年に江戸川区平井で創業し、1992(平成4)年に習志野市津田沼へ本社を移転しました。私は2013(平成25)年に3代目社長として就任しました。

県内には本社に加え、八千代市大和田新田に開発・カスタマーサービス拠点があります。八千代市の拠点が手狭になった際にご縁があって秋田県に進出し、現在では全国に四つの工場を有しています。また海外ではスペインのマドリードに販売拠点を置き、国内で生産した製品を輸出しています。近年、印刷市場においてもデジタル化が進んでいますが、当社では紙だけではなく、シールやラベル、軟包装、捺染(注1)建材等、多様な対象への印刷が可能な印刷機の製造にも事業領域を拡大してきました。印刷に関する需要は幅広く、さらに掘り起こせるものと考えています。
注1:捺染。布に模様を印刷する染色方法。染料に糊を混ぜ、布に直接すりつけて染色する。
宮腰 亨 株式会社ミヤコシ 代表取締役社長(印刷機製造業:取引店 津田沼駅前支店)
1971年千葉県生まれ。大学卒業後、祖父が創業した同社に1997年に入社。2013年社長就任。電子媒体の普及に伴う印刷需要の低下を見据え、さまざまな対象物へのデジタル印刷機の活用や事業の多角化を推進する。

水野 ありがとうございました。頭取からは、千葉県のものづくりについての全体像をお話しいただけますか。

佐久間 前回までの地方創生の分野に続いて、今回はものづくりの分野でそれぞれに特徴ある活躍をされている皆さまとお話しすることができ、大変うれしく思っています。今回のお二人は食品製造業と機械製造業の業界からお越しいただいていますが、千葉県は製造品出荷額等(従業者4人以上の事業所)が約11兆4020億円(平成29年工業統計調査〈平成28年実績〉)と全国7位で、京葉臨海工業地域の鉄鋼、石油・化学等を中心とする素材型産業のグローバル企業群、内陸工業団地における各種製造業、そして首都圏マーケットの一角をなす立地を活かした食品関連製造業など、多様な業種により構成されているのが特徴です。個々の企業を見ても、皆さまのようにそれぞれ特徴を持つものづくり企業が数多くあります。今後も、

  1. 国際物流拠点である二つの首都圏空港や千葉港へのアクセスが容易なこと、
  2. 首都圏から全国へとつながる高速道路網を持つこと、
  3. 人口増加を維持しており、人材の確保が比較的容易であること、
  4. 首都圏の中では地価が相対的に安いこと、

といった優位性を活かして、多くの企業が立地・活躍できるものと期待しています。当行は、県内に限らず、近接県の営業地域においても、元気の良い製造業、ベンチャー企業等とのお取り引きが数多くあります。

水野 頭取から、千葉銀行の営業地域には特徴あるものづくり企業が多いとのお話がありましたが、お二人からそれぞれの会社の特徴やコアとなる技術についてご説明いただけますでしょうか。

古谷 当社には三つの特徴があります。第1には、「地域に密着した企業であること」です。多古町に工場を設けていますが、ここは酪農地帯に近いので、新鮮な生乳を早く集めてすぐに商品化し、お客さまに届けることができます。よくステーキの例でご説明するのですが、より本来の味に近い〝レア〟で安全に食べるには、元の肉が新鮮でないといけません。牛乳も同じです。牛乳の殺菌方法にはいくつかありますが、当社では、HTST殺菌法(72℃以上で15秒間殺菌する)とUHT殺菌法(120~150℃で2~3秒間殺菌する)を用いております。

HTST殺菌法は加熱による影響が少ないため、生乳に近い風味を維持できるのですが、品質管理上、ステーキの例のように、より新鮮な生乳を使用しなければなりません。その点、当社は新鮮で高品質な生乳を集めることができるので、この殺菌方法を用いた製品をつくることができます。また、そのために選りすぐった酪農家の生乳を限定使用しています。第2は「高品質な製造ライン」です。

通常のチルド商品よりも高度な衛生管理・製造技術により、商品を長期間保存することが可能なアセプティック(無菌)製造ラインを保有しています。同工場はISO14001やHACCPの認証も取得しています。第3は「発酵乳(ヨーグルト)の製造技術」です。味の決め手となる原料、乳酸菌、製造技術に関する高い知見を持つ商品開発・製造体制により、お客さまのご要望に応じた多様な商品を提供することが可能です。

宮腰 当社のコア技術は二つあります。まず一つ目が印刷する紙などの「搬送技」です。印刷と一口で言っても、先ほどお話ししたように、いろいろな印刷方式があるほか、印刷物の種類により、その対象も紙(新聞紙、コート紙、段ボール等)、フィルム、布などさまざまです。

これらに高速で正確な印刷を行うには、インクの下にちょうどよいタイミングで印刷対象を送り込む技術(=搬送技術)が求められるのですが、当社は多様な対象に対応できる搬送技術を有しています。
特に、創業以来得意とする「ビジネスフォーム印刷機(注2)」でのシェアは、世界トップクラスです。多くの同業他社から提携や共同開発のお話をいただいていますが、それもこの分野で磨いた搬送技術があるからです。印刷機にはアナログ印刷機とデジタル印刷機の2種類があり、以前は大量生産向きのアナログ印刷機が主流でしたが、近年は多品種少量に対応できるデジタル印刷機のニーズが高まっています。ただし構造上、デジタル印刷機よりもアナログ印刷機の方が印刷速度は速く、毎分300メートルで印刷できるのですが、

デジタル印刷機も搬送技術の改良によってこのスピードに近づいています。例えば当社最新鋭のデジタルインクジェットプリンターは、毎分200メートルでの印刷が可能です。開発初期、2004年頃のデジタル印刷機の最高スペックは毎分50メートルでしたから、15年で4倍のスピードになりました。それを可能にするためには、やはり安定した搬送技術が不可欠なのです。当社のコアの二つ目は「ミヤコシスピリッツ」です。私は社員に「お客さまのよろず相談所になろう」と言っています。社員がお客さまの課題に真摯に向き合い、営業・工場が一体となって一緒に取り組み、解決することで、新しい分野を切り拓いてきました。このため当社の製品は基本的にオーダーメイドです。
注2:複写式の伝票や圧着ハガキ、窓付き封筒などの事務処理用に用いられる、書式の決まった帳票を製作する印刷機。

水野 宮腰社長から技術を支える人材についてのお話がありましたが、古谷社長からも現場や商品開発などに携わる人材についてお教えください。

古谷 当社では、先ほどお話ししたアセプティック製造ラインを導入する際に習得した知識、技術、経験が既存システムのラインにもフィードバックされ、工場全体の衛生管理と技術の向上につながっています。また、発酵乳でも多様な商品を安定的に大量に製造することができる体制を確立しています。

水野 お二人からお話しいただいたコアとなる技術や人材について、頭取はどのようにお考えでしょうか。

佐久間 皆さまが今ご紹介いただいたようなイノベーションと差別化に取り組み、成果を上げているのは頼もしく、素晴らしいと思います。最近はAI、IT技術等の進歩により〝人〟の持つ役割がどのように変化していくのかが話題になることも多いのですが、お二人とも技術のみならず人材を大切な要素とされていることにも感銘を受けました。遠い将来はともかく、当面は〝人〟がものづくり、そして営業活動、お客さまとの対応に欠かせない重要な要素であり続けるでしょう。前回「地方創生」をテーマとした座談会に参加された経営者の方々も、企業や地域を支える人材について強い問題意識を持っておられましたが、この点はすべての企業に共通すると思います。当行でも、中期経営計画において人材育成の強化を掲げています。業務効率化を進めるとともに、より付加価値の高いサービスを提供できるプロフェッショナル人材の育成に努めています。

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