イノベーションと差別化に挑み続ける ─ものづくりの魅力─ <2>

地域との関わり・人材育成

水野 ところで〝ものづくり企業〟の地域との関係は、地域に交流人口増加による賑わいをもたらし、仕事・雇用を生み出す〝地方創生企業〟とは自ずと違ってきます。皆さまの地域との関わりについてお話しいただけますか。

古谷  当社の場合は、原料調達、販売市場、雇用等と幅広く地域との接点があります。切っても切り離せない関係です。先ほどもお話ししたとおり、成田工場周辺は酪農が盛んな地域で生乳調達には恵まれた立地です。宅配向けのビン製品も、千葉県産生乳を使った商品が多く、おいしいとご好評いただいており、当社の看板商品になっています。供給面では宅配のほか、千葉県の学校給食において、北東部を中心として約20%に供給しています。さらに病院や介護施設、量販店、供給網に乗りにくい地域の小規模なお得意さまへの供給も丁寧に行っています。千葉県以外の関東エリアでは、量販店向けに牛乳、ヨーグルト等を、より広域では、全国のコンビニ向けにカップ飲料をOEMにより提供しています。
古谷乳業は、ちばアクアラインマラソン2018 のハーフマラソンのフィニッシュ地点で、主に学校給食用として製造している牛乳(200㎖)2,000本をランナーに配布

成田工場は、高速道路網を使った全国展開に格好の立地ですが、今後、空港機能強化に伴い周辺道路が一段と整備され、道路網の使い勝手はさらに良くなると期待しています。雇用については、人口が増加している千葉県でも、企業の人材確保が大変になってきています。特に成田空港周辺は、今後、人口も増えますが仕事も増え、ますます厳しくなるでしょう。ただし、先日北陸地方の経営者の方に伺ったところ、千葉県は人口が多いからまだ良いほうではないかと言われました。引き続き地域に密着した経営で、地元の方々にとってより魅力ある働く場となりたいと思っています。

水野 人材確保、育成について敷衍してお聞かせください。大学との連携も進めていますね。

古谷  採用は成田工場が主で、地元周辺の方々を重点的に採用しています。地域の高校、大学とのパイプを大切にしています。新卒だけでなく、地元出身者の中途採用も積極的に行っております。農業系の大学ともつながりを強くして、商品開発や品質管理の核となる人材を送っていただいています。なお、県内の酪農家とのご縁も大切にしており、親戚の方等が何人も入社しています。

水野 今のお話について、頭取のご感想はいかがですか。

佐久間 古谷乳業さまと地域の関わりは、雇用の場であるだけでなく、原料の調達から商品の市場供給・宅配まですべての場になっていることがわかりました。情報収集、イノベーション、人材確保等さまざまな場面で地域の重要な結節点になっているのですね。ものづくり企業の場合、それぞれの理念、業務内容により地域とさまざまな関わり方があり得ると思いますが、交流人口増加を通じて地域を活性化させる地方創生関連の企業とはまた違ったかたちで地域との関わりが非常に大きく、その発展には欠かせない存在になっています。

水野 ありがとうございます。宮腰社長は、地域との関係は主に雇用になりますか。

宮腰 本社や工場のある千葉県、秋田県との関係で言えば、採用ではそれぞれの地域に大変お世話になっています。継続して採用、育成する実績を積み重ねることで、安定した信頼関係を実現しています。特に秋田県では、貴重な地元就職先として高い人気があります。技術面、営業面のどちらも地元大学との連携を行っており、千葉工業大学、神田外語大学からは毎年人材を採用しています。中には設計開発を担当したり、入社2年目から海外営業で活躍している女性社員もいます。

ミヤコシが「みらいはぐくみ債」発行を通じて千葉工業大学、神田外語大学へプロジェクター、自走用車いすをそれぞれ寄贈。寄贈式では同社と両校関係者、全OB・OG、千葉銀行が一堂に会して貴重な意見交換ができ、距離感も一層縮まった
ミヤコシは早くから、全社員が仕事と家庭・子育てを両立させることができる働きやすい環境づくりを推進しており、第一線で活躍する女性社員の姿も目立つ
こうしたご縁から、両校には2017年7月に「地方創生私募債(愛称:みらいはぐくみ債)(注3)」の発行を通じて、プロジェクター、自走用車いすをそれぞれ寄贈させていただきました。ただ、どこに会社の拠点を置くかは、人材確保の要因だけでは決まりません。他にも地価、環境、自治体による優遇策など立地を決める要因は多いですが、ご縁も大切です。実際、秋田県への進出の経緯は、八千代市の拠点が手狭になったときに、秋田県の企業誘致担当者が熱心に訪ねてきたご縁でした。結果的には、秋田県は「お酒がおいしい」等といった地域の魅力以上に、地元での就職希望者の受け皿になり、当社としては人材確保という意味で立地優位性があると感じています。また、当社が千葉県に本社を置く理由として、景気後退の影響や価格競争激化等により私どもが苦しい状況だったときにも、全面的に支援してくださった千葉銀行の存在も大きいです。こうした実績の積み重ね一つ一つに意味があり、今後とも今の場所で頑張っていきたいと思っています。
注3:学校等の環境整備を通じて地域社会へ貢献していくことを目的に、千葉銀行が私募債の発行企業から受け取る引受手数料の一部で書籍や楽器等の教育関連の物品を購入し、これを発行企業が指定する学校等に寄贈するもの。

水野 ミヤコシさまも、地域との関わりはさまざまなかたちで非常に密接なのですね。頭取からはいかがですが。

佐久間 当行をご評価いただきありがとうございます。お客さまが苦しいときこそしっかりした支援をさせていただくのが地域金融機関の使命です。ものづくり企業の場合、地域の雇用への影響(効果)が注目されることが多いと思いますが、企業がその地域で事業を継続するための条件はそれだけではないということを改めて感じました。秋田進出の例でご説明いただきましたが、そもそもこの地域でものづくりをしよう、事業を継続しようと思わせる何かが必要です。そうした条件が整わないために、あるいはなくなってしまったために移転してしまうケースもあり得ます。当行も、企業立地に関する情報提供、自治体の企業立地支援制度の活用支援をはじめ、企業活動を円滑に行うための環境づくりを継続して行っていきます。

関連記事

PAGE TOP